2014年04月02日

2014-3月 映画の記録

*2014.3.1〜3.31

【今月の洋画ベスト】
アメリカン・スリープオーバー
 すごーーーく良かった!! 面白かったし、素晴らしかった!こっそり泣いたし。でもな。なんかあまり多くは語りたくない。まだちゃんと公開した映画じゃないってこともあるんだけど、ちょっと出し惜しみしたいくらい魅力的な映画。なんだろ、すっごく気に入ったスイーツは内緒にしておきたいみたいな。
 ちょっと遠巻きに言うなら、ジャンル映画とかインディペンデント映画とかシネフィル文脈とかでおさまらんなという映画。どこまで、どの時代の何まで遡れますかね、っていうくらい集大成的な映画でした。ぶっちゃけ、すぐ下のレイヤーには『アメリカン・グラフィティ』があるわけだが、その上に、なんとも面白い絵が描けたものだなと思う。地方都市というか「田舎」という世界も豊かに彩れば爽快。フェリーニとかトリュフォーまで感じちゃったな。
 もし通常公開されるようなことがあったら必見!!

【今月の邦画ベスト】
白ゆき姫殺人事件
 素晴らしいっ!斬新!終始、映画的にドキドキザワザワしっぱなし!ほんとに素晴らしかった!世界に誇れる映画。こんなの今までどこにもない映画だろう。映画的に感動し、さらにテーマに大感動。中村義洋いいなあ。いらないベタつきをばっさばさ切り落として「最重要」だけきっちり残す。過去作だと『ポテチ』を想起するが、それではとらえきれないほどの斬新さ。翻訳不能のテキストの洪水をどうとらえるんですかね「評論家さん」たちは。
 昨年のTIFFで『マリー・イズ・ハッピー』っていうツイートを語り口の中心に据えた映画を見たが、まったくこなれていないなあと思った。でも『白ゆき姫殺人事件』ときたら。原作(とその出版社)の未消化を補って余りある。中盤で、ツイートの正体不明さと噛み合わなさを、クローズアップするでもなく、さらっと見せるところがあるんだけど、あれが面白かった。何一つ積み重ねにならないテキストが積み上げられていって、画面がいっぱいになる不快感にザワザワした。面白かったなー
 日本映画にとって不幸なことは、クラシカルな物に最高のランクが与えられてしまうことで、国内のみならず古典を模倣しなければ「映画」として認めてもらえない。そのカウンターとしてインディーがあり、その承認も古典の延長線にあったりすることがつまんない、と常日頃思うわけだが、その点、『白ゆき姫殺人事件』はクラシカルな「藪の中」ではない証言の重なりを描いていて、とても斬新だと思ったんだけどな。例えば飲み会の描写。まるで間違い探しみたいな証言の重なりが面白かった。そして、それは原作にはない。
 ミステリーとしては湊かなえの構成ギミック小説が原作だから、まあ冴えないんだけど、「現実」のぶれによる存在の曖昧さと、それでもぶれない「軸」を斬新に盛り込んだことで面白くなったと思うんだけどな。SNSの使い方も、SNS自体を描くのではない使い方がよいのじゃない?
 「藪の中」のように真実の曖昧さを見せるでもなく、勘違いしがちだがゴシップ社会批判めいてもいないし、ただ目の前にある「現実」のゆらぎを描いている。それはツイッター越しに見た「現実」でもあるわけね。そうすると自分の存在もゆらぐわけで。
 しかしなあ、あのクソつまらない原作がここまでの傑作になるとは!

【すごく面白かった!】(五十音順・以下同様)
アナと雪の女王
 なんでこんなシーンを作れるんだろうと終始感動しっぱなし。それは技術ということではなく感性の問題。こんな深くて柔らかくて優しくて広くて美しい感性は、どうしたら生まれるのか。監督の一人、ジェニファー・リーさん「今のことだと感じられる映画を作りたかった」とのこと。まさに、そういう映画だった。
 ぎゅっと凝縮した箱庭世界でのハイスピードなドラマが楽しかった。ここだけの魔法というのがディズニー映画の本質であろうなと思ったし、それを素晴らしいと思った。広げるばかりが世界意識ではないはずだ。
 しかし、『アナと雪の女王』の前についてたミッキーの短編は好きじゃない。ああいう3D意識が嫌い。あれ、3Dじゃなくていいよね。
偉大なる、しゅららぼん
 すげえ面白かったですよ! 日本的ヒロイックファンタジーですかね。
 それぞれのキャラクターの葛藤が明確で、それらが一つのストーリーにまとまっていくのは気持ちよかったです。役者さんもみんな達者だし。深田恭子でさえ。CGも良かったな。無理のないヒロイックファンタジーでした。
5つ数えれば君の夢
 前半が視点の集合体、後半が概念の集合体、最終的に美意識、なのは「あの娘が海辺で踊ってる」を思わせるが、今回はぶくぶくっとしてイビツだったような印象。出演者が多過ぎた? 良かったですけどね。前半の視点の集合体は、山戸監督の見てきた物・見ようとする物の集合体で、後半の概念の集合体は語彙の洪水。それらが詩情となって結実するわけだけど、ね。今回は結実し損ねたかも。…いや、わかってないだけかもしれないけど。結実のタイミングがわかりにくかったか。
 しかし山戸結希監督は、東京女子流さんをきっちり取り込んじゃいましたねー。これからのアイドル映画は、取り込むか取り込まれるかのどちらかですかね。「キレイに撮る」「魅力を引き出す」時代じゃないですね。「ほころび」とか論外。『5つ数えれば君の夢』は、『あの娘が海辺で踊ってる』の方程式に東京女子流を代入した映画だったかも。
 山戸結希監督は「夜の立ち話」が好きだよね。最も好きなシーンですね。「夜の立ち話」した、あの東京女子流の子、中江友梨さんていうのか。あの子いちばんよかったね。
 でも『アメリカン・スリープオーバー』に比べると『5つ数えれば君の夢』は理屈っぽすぎるなー
祖谷物語―おくのひと―
 人の行為と結果である「物語」と、その外界としての「自然」との共生。そして「自然」は「物語」を掃き出す。掃き出される「物語」にはこの映画自体も含まれる。ラストで「物語」全てを「自然」が受け入れたとき、えもいわれぬ感動に襲われてしまった。大傑作!!いわば「物語の里山」ですね。すっごく面白かったです。
 自然を丁寧に描写した映画なんてタカをくくってたら、ファーストシーンで度肝抜かれた。しかも「都会編」まであって、それでラストで大感動。素晴らしかったー。
 これ作るのにどれだけかかったんだろ。とっても長い映画だったけど、気迫や執念があふれていて、終始スクリーンに釘付けだった。そして、この映画での武田梨奈の魅力は「通りの良い声」。声の美しい人だなと思った。
それでも夜は明ける
 吊るされるところの描写はすごい。裏でいろんなドラマが動いているはずで、凡才はそのいろんなドラマを絡めようとするだろうに、この天才監督はそのまま「動かないドラマ」を描く。その後も動いた部分は補完せず、しかし破綻なく進む。すげえ監督ですねー。
 地獄の表現が芸術的だった。澱とか淀みとしての地獄。地獄における澱のようなセックスは動きが少ない。「ロール、ジョルダン、ロール」は淀みにハマった者たちがそこから流れ出ることを望む歌だ。この監督は、見ようとしているモノが尋常じゃない。
 作り手(たち)が目指したのは、奴隷制度についての理解を深めることではなくて、埋もれていたアメリカの歴史を掘り起こすことだろうし、それはこの監督の表現力がベストだったなと思った。そして、「悪人」の線引きを難しくさせているのも面白い。『ジャンゴ』くらい簡単だったらね。ファスやダノが悪いならベネも悪い。
 そこで、あの人が絶対的正義として登場。で、それで、かえって話はややこしくなっちゃったかも。あれはちょっと。
 しかし、これでしゃらっと作品賞取っちゃったってのは、この監督の方法が「メジャーな表現方法になった」ということかしらね。ま、違うと思って書いてるんだけど。
ネブラスカ
 わずかな切り口から人生の総体をどーんと投影してみせた映画。それは、決して老いについての悲哀や同情などではない。それぞれの年代や立場に応じた像ではなく、おそらくどんな年代でも、普遍的な共通の像が受け取れるのだと思う。とても素晴らしかった!傑作でした。今までの作品よりも、さらに層の厚みを感じる映画でした。サラッとこんな映画作っちゃうんだーと感動しました。欲しかったトラックを得意げに運転する年老いた親父とか、単に「老い」を哀れむ視点とは違うモノを感じました。
LIFE!
 重ったいモノ削ぎ落として、ひたすら軽くてスマートでした。クリステン・ウィグのフトコロの深さを堪能。そしてシナボンのアイツ。アレもコレも、とってもいいんじゃないでしょうか。洞口依子さんが文春のレビューで「CMの寄せ集め」って書いてたけど、だからこそ非日常から重みが抜き去られて、空白のNo25が埋まるのであり、妄想と自分の立ち位置の溝が埋まるのかなと思う。単純に見えてそうでもない構造かなと。
 リアルに感じるものをウソっぽく、実体がないと思えるものをリアルに描くなんて、なかなか巧みなんじゃないでしょうか。シナボンさんとハグするのには意味があるなー
LEGO The MOVIE
 これは傑作だわ。いやー面白かったなー!『LIFE!』『Rabbit and Deer』『ミッキーのミニー救出大作戦』と並べて、リアルとアンリアルについて考えちゃう。

【面白かった】
銀の匙 Silver Spoon
 リアリズムに軸足を置いたドラマっぽいアニメを、もう一回ドラマに戻すにあたっての工夫が感じられたな。ベーコンは生肉には戻せないと思ってたんだけど、案外戻せたなと。酪農のリアリズムに軸足置いたまま、「ご当地映画」には踏み込まず、キャラを戯画化せず、若い時分の普遍的テーマにつなげるなんて。ラストの馬の名前で涙どーん、そしてタイトルがどーん、もう一回涙どーん。
 広瀬アリスは、どんどんいい感じのお姉さんになっていくねー。そしてここでも黒木華が。
小さいおうち
 ひどかった『東京家族』とは比較にならないほど面白かった。山田洋次は、小津安二郎的な表現を地肩として獲得できたように思った。冗談みたいだった前作に比べて、うまく消化してるような印象。
 そして、これは山田洋次監督として、画期的な映画なんじゃなかろうか。こんなにセクシーで退廃的な映画を作る人だとは思ってなかった。小津安二郎風味は感じるものの、それが気にならないくらい新しい山田洋次風味があった。…いや、もともとの資質だったのを気づかなかっただけか。
 エピローグの部分がとっても面白いと思った。現代から昭和初期を眺める視点が際立った。層の厚みを感じる面白い映画でした。『永遠の0』と外見は似てるけど、厚みが全然違うね。うっかり手を出すと作り手のぺらっぺらさが透けて見える形式。
 手紙を読み聞かされた米倉斉加年のセリフがすげえですよ。ありゃすごいわ。
魔女の宅急便
 アニメよりいいと思った。かつての大林ジュブナイル映画のちょっとだけ進化版という感じ。キキ役の小芝風花の部屋着姿だけで満足。小芝風花いいじゃないですか。ややぶさカワでもっさり美人。奥寺っぽさは薄めで、奥寺ファンとしては物足りないが、それもまたヨシ。いいと思います! ストーリー展開のいろんな「えーー」も好きだなあ。
はなしかわって
「黒い寅さん」と言いたい。ハル・ハートリーも、いい感じに年取ってるんだなと思った。
光にふれる
 これは素晴らしかった!! 芸術的で繊細な映画でした。大感動ですね。

【イマイチだった】
乙女のレシピ
 他愛のない一瞬を大事にする映画は面白いと思う。でも、終盤でドラマ性のあるシーンに重みを持たせるなら、それなりの小さいドラマがないと、はぐれちゃうよなあと思った。女の子たちは可愛かったです。でも、ストーリーのメインであるはずの料理、というか炊き込み御飯がちっとも美味しそうじゃないっていうのが最大の欠点。
グランドピアノ
 かなり微妙。ひたすらヒッチコック、カーペンター、デパルマは偉大だとしか。
 不満なのは、序盤できっちり全体像を意識させなかったことかな。ミステリーの巨匠なら、序盤で示した全体像がラストで鮮やかに崩壊する様を描くだろう。ラストの崩壊を見て、ああ序盤は辛うじて結ばれていた全体像なんだなと気づかされる。そういうカタルシスに欠けてたな。
プリキュアオールスターズNS3
 しかしまあ、うっすらわかってたけど、あ、やっぱ人気ないんだあの子とこの子とか、いろいろ気に病んでしまいました。そういう意味で、このスタイルは限界ですかね。だいたい、シャイニールミナスは、一言もしゃべんないし、もちろん夢はスルーだし、トリプル技ナシだし、それどころかラストショットではなぎ・ほのに背を向けて他の子と話してて、仲悪いのか?と気になったし。ビートなんか、まだいいユメ見せてもらってただけラッキーだよな。シャイニールミナスのことをたこ焼き屋の住み込みバイトくらいにしか考えてないだろ!
 なぎ・ほの・ひかり原理主義者としては不満通り越して憤りで、なんだこれじゃオールライダーじゃねーかと思っていたわけですが、ある場面から反転して感涙でした。いろんなアレもコレも勘弁してやるわ。
 でも、全体的になんかちょっと説教臭くなかったですか? プリキュア全体が老けたなという印象。作り手の年齢が上がったということではなくて、「プリキュア年数」を重ねすぎたのかな。薄い黄色の髪の人だけが若々しくて、唯一の救いでしたね。あれがなかったら、ちょっと。
フルートベール駅で
 どうも好きになれないっすね。観客賞はわかるけど、作品賞はどうなんだろ。この年のサンダンスには、もっと面白そうなのあるのになと。そっちは見られてないんだけど。
 そんなことはないんだろうけど、『フルートベール』って、なんか「取りにいった」映画っぽくて好きになれん。『それでも夜明け』は、「取りにいく」雰囲気ありありなのに、変なもの混ぜ込んでうまいこと食わせちゃったみたいな感じだったけど、フルートベールは「取りにいく」素材入れ過ぎで、そればっかりな気がする。
ロボコップ
 サミュエル・L・ジャクソンの存在がチャンチャラ、チャンチャラで、そういうメディア関連がクソすぎて、まあなんとか形になったかもしれなかった話がグチャグチャに。これはダメだと思います!
 旧ロボコップは、システムの痛快な破壊者であったと思うが、今回のはシステムの中でもがく道化。時代が変わってデータの扱いが昔と違っちゃって、その中にロボコップを取り込めば取り込むほど過去の遺物になるというパラドックス。ビッグデータとか考えると、ロボコップって、利用価値とか考えても、どう考えても不要な気がしてきちゃって、それでも「利用されてるんだ」「利用してるんだ」って思い込んでるストーリーが、とことん切なかった。かなり辛かったです。

【がっかりだった】
愛の渦
 もっさりした映画だなあという印象。意地の悪い、胸くそ悪い映画でした。期待してたんだが。あっけらかんと笑っている場内が気持ち悪くて。
 映画っぽい面白味に欠ける気がしたなー。エロい映画は必要だと思うが、これは「エロに対するスタンス」の映画だったか。作り手がどこかでしゃべってたけど、『愛の渦』『恋の渦』でワンセットだとか。でも、「良いニュースと悪いニュース」の組み合わせくらいにしか感じなかったな。つまり、良いニュースだけでいいってことで。
絶対領域
 ダメだと思ったなー。アイドル題材にすると変なところにハマるという例かも。身も蓋もない、元も子もない話。のみならず、話は、変な思いつきに近い感性によってか、ヨレヨレに。わかりにくくてイライラ。がっかりでした。アイドルはスポンサーと寝てますとか、アイドル目当ての変な男がいますとか、そういう「昔ながらのダークサイド」は最早アイドルの本質どころか足元にもたどりつかないのだと思う。ファンだかなんだかのメンヘラ男の描写も胸くそ悪かったな。陳腐。
パズル
 クソひでえ。作り手の醜悪な思想が透けて見えるとしか言いようがない。気持ち悪い、不愉快、醜い。いったい、この作り手は何を見せようとしているのか。ただ出演者を拷問するだけのトーチャーポルノ。
「残虐を高次元で楽しめる僕たち」みたいな変なエリート意識感じちゃった。まさか、そんなこと考えて作るわけないんだけど、そうでないなら「じゃ何?」って思う。そんな空っぽで薄っぺらで、でも「見る人を選ぶ」とか気色悪いエリート意識あおる、そんな映画に思えた。積極的に嫌います。
 腹に電子レンジ落とされて胎児を殺された女が、入院して車椅子に乗ったりしたのは割と一瞬で、けっこうピンピンしていて、その後もちょくちょく出てきて意味有りげな表情を見せるあたりが、この作り手の気色の悪いところです。流産させるのが好きらしいことはよくわかったんだけど、そういう「記号」に振り回されてるだけのような気がしたんだけど。
 この監督の映画だけは、二度と見ない。
ハリケーン・アワー
 初めに出てきた医師がすげえイヤなやつだったんだが、終わってみると、それが最大の悪役だった。そのあと、しょぼい強盗みたいな悪役がユラユラ現れる以外は、発電機グイングインするばっかり。グイングインの工夫もさえない。あれ便利になったのか?
 なんか『リミット』とか『フローズン』とかと似てた。こういう映画つまんなーい!
マチェーテ・キルズ
 退屈だったぁー。つまんねえ話。『マチェーテ・キルズ』の絶望的なつまらなさは、つまり模擬グラインドハウス映画の終焉でもあるなあ。もうムリだろなあ。ラストなんか、まるでジャンプ10週打ち切り漫画の最終話だよね。
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2014年03月09日

2014-2月 映画の記録

*2014.2.1〜2.28

【今月の洋画ベスト】
17歳
 この映画の死についての繊細な描き方といったら筆舌に尽くしがたし! 未亡人との対話のシーンから、冒頭に向けて逆向きに全てのドミノがぱたぱた倒れて、それで表れるのが『17歳』の美しさ!「性」についての外殻と中身を描いていて、それが生と死そのものに結びついていく。何度でも見たい映画、というか、精神的に所有したい映画。

【今月の邦画ベスト】
ハロー!純一
 去年の暮れから今年にかけて魅了された邦画すべてに共通しているのは、「日本のポップス」についての認識とそれについての空き領域を十分に確保していること。エンドロール曲とかじゃなくて。それは、邦画にとって大事な方向性だと思うんだけどな。これからやってくるアイドル映画の潮流でも重要なのは「日本のポップス」という認識と理解。だと思うんだけどな。
 余談だが、「日本のポップス」という認識に欠けるような気がするから嫌いだったのは『Seventh Code』。

【すごく面白かった!】(五十音順・以下同様)
ウルフ・オブ・ウォールストリート
 なんか小ずるい映画に思えた。着地点はマッチョだし。子羊たちを見下ろして、観客もマッチョなウルフになったような高揚感を得るわけだわね。あれで、「オレはペンを売れない側だなあ」って思う人は少ないだろう。
 クレイジーな金持ち描写など、いろんな表現も紋切り型に感じた。札束の上でセックスとか。古くないっすか? スイスの銀行などでの心内語表現のやりとりとか、語り口の視点をごちゃつかせるのは面白かったけど、なんかごまかしてるようにしか思えなかった。…レモンなんちゃらとかいうドラッグに関わる一連のシークエンスだけは、めっちゃくちゃ面白かったけど。それでも、ややパルプフィクションっぽかったけど。
 結局、描いているのは空疎なのかなあと思いつつ、じゃあ、あの音楽の使い方はなんだよ!と思うので、あの主人公の生き方を有機的な方向で承認する映画なのかなあとか思いつつ、見終わってから苛ついてしまった映画でした。スコセッシ何考えてるんだかわからん。ストーンズとかザ・バンドとかの映画見ても思うんだけど、スコセッシってロックンロールを「大金をかせぐ詐欺」くらいにしか思ってないのかな。それを『ウルフ・オブ・ウォールストリート』見ながら確信してたんだけど、エンドクレジットでロビー・ロバートソンとか出るからびっくりしたわけです。でも、それって当然のことなんでしょ?
ザ・イースト
 同じ監督・脚本…というかブリット・マーリングのセンス全開の『Sound of my voice』と『ザ・イースト』は合わせ鏡だ。どちらも、鑑賞者の手を借りずに、自らが有機的な存在であろうとする。鑑賞者が掘っていくと、どんどん違う物体が出てきて、最後は全裸体にたどりつく。でも本質はその裸体にはなくて、掘っている鑑賞者自身であったりするのだ。
 ブリット・マーリングは「キミが何を考えているのかわからないんだ」と言われて全てを話す、でも彼女は「それで何がわかるの?」と言っている。情報になんか何も理解のポイントはないじゃないと言う。
 ブリット・マーリングの映画は、いつも「初めて見る映画」だ。今、世界で最もとんでもない映画を作るのがブリット・マーリングだと思う。
スノーピアサー
『殺人の追憶』でも『母なる証明』でも『グエムル』でもない、別のとんでもない映画だったので、すっごく良かったと思います。素晴らしかったです! ポン・ジュノの今までの作品でいちばん好きだ。
 時間を追うごとに話がふくらんでいって、それと反比例して主人公の希望がしぼんでいく、で、ラストで、ばーん。作り手にとって、世界を駆け巡る列車は、ネットワークそのものなのだろう。自分たちが回り続ける「時」で、周囲に静止した「時」が存在してて、でもそれはウソで本当は逆だったりして。それは死と生の劇的な反転でもあるし。ラストは鳥肌立ったんだけど。
Tiger & Bunny The Rising
 ツボどころとかキャラの魅力とか、外してないので、すんなり世界にはまれますね。いいと思います!
ニシノユキヒコの恋と冒険
 波にさらわれる白い貝殻のような、風に揺れる蜘蛛の巣のような、つい噛み砕いてしまうキャンディのような、もろくて甘くて優しい映画でした。美しい虚構こそが、そっと現実に寄り添ってくれる。素晴らしかったです!!最高!すごく面白かった!作家主義に寄りかかれない邦画の、ベストなバランスを感じる映画だった。竹野内豊はもちろん素晴らしいが、尾野真千子の素晴らしいこと! あのオフィスでの「ウキウキ真千子さん」は監督演出ではなく真千子さん主導だとか(『シナリオ』誌)。
 映画館の後ろの席にいるカップルが明らかに飽きてるっぽい音をたててたのが印象的。「現役」のための映画じゃないと思う。ちょっといろんなところが苦くなったり酸っぱくなっちゃったりした人向けなんだろうな。
ホビット 竜に奪われた王国 HFR 3D
 HFR3Dすごく良かったよ!暗闇が苦にならない3D。苦にならないどころか、暗闇を目を凝らして遠くまで見通せてるかのような錯覚があって、心地よいとさえ。エンドクレジットでメガネを外してみたら、白い文字が眩しかった。HFR3Dの場合、メガネは、強い光から目を守るためのものだね。
 しかし話が中途過ぎ。早く次!早く次!
ラッシュ プライドと友情
 まさにピーター・モーガンの映画という感じ。同じピーター・モーガン作品として『ヒアアフター』に近い部分を持っていて、それは、自己の存在の確かな手応えを他者との関わりの中で見つけること。絶対と相対の本質的な交わり。だから、どっちの映画もラストの「呼びかけ」がグッとくる。『ヒアアフター』について「起承転結」の「起承」で終わっちゃってる映画だって酷評があった、とんでもない話で、あの映画は「転結」だけの映画だった。それに近い映画の作りを『ラッシュ』にも感じた。監督の差で、異なる手触りの映画になってはいるが。ドライなイーストウッドに比べると、ロン・ハワードは、やや湿っぽいが、それもまたヨシ。

【面白かった】
新しき世界
 オーソドックスな枠組みを、常識的な結びつきを崩すことで打開しようとしてるのかなと思うんだけど、それならラストは不要だったな−、と。あのラストが冒頭にあったら、違う見せ方になったんじゃない?で、それは既存の枠組みだよなあと。
 この監督が脚本書いた『悪魔を見た』『生き残るための3つの取引』も、「うまいことまとめた感」が強くて、それは一級品の虚構であるということなんだが、なんかね、もうちょっとそういう臭みが薄まればいいのになと思う。でも、今までと違うメロドラマを作ろうとしてるんだろう。
 そのあたり、『スノーピアサー』は、『新しき世界』のラストあたりで見え始めるような「結びつき」を、終盤でばっさばっさぶった切りはじめるものだから、めちゃくちゃ爽快で面白い。それがあっての、あのラストシーンなわけで、やっぱ、すげえわポンジュノ。
 整理してみると、たいした話じゃないじゃん!って思う。それを見応えのあるドラマに仕立て上げた力は感じるんだけど。でも、単純な話を無駄にこじらせただけという気もする。やっぱ、あのラストのラストは、ないっすよ。
神奈川芸術大学映像学科研究室
 堅くて青いんだけど、それゆえの真面目コメディーな感じが良いと思う。多分、人生で1本しかできないレアなコメディー。映画の後で出てきた監督さんが、映画そのままの真面目コメディーな人だったよ。
ダラス・バイヤーズクラブ
 生におけるしなやかさは、疲弊したシステムに取り込まれなければ獲得できるのであり、獲得せねばならない。優しいシステム破壊者。
 しかし、マコノヒーの力が全てという感じだし、あ、それだけなんだ、という感じ。人間関係が中心なので、なんかぬるく感じちゃった。ラストシーンのように、演出はポンヨリだし。死についての扱いが凡庸だし。前の週に『17歳』見ちゃったし。
マイティソー ダークワールド 3D
 アベ関連だと、他より一段落ちるのかな。トリックスターが際立つくらい単調で平板なストーリーってのはいかがなものか。人気に寄りかかりすぎ? まあ面白く見ましたが。
ランナウェイ・ブルース
 実際はどうかわからぬが、私小説をもう一度煮詰めて「私・私小説」にしちゃった感じ。血が濃すぎる! そういうイメージにダコタ・ファニングははまっていた気がするが。ストーリーというより、小さなエピソードの集合体のようで、その一つ一つがちょっといやああな「私小説」風味を醸し出している。それらが純粋な虚構であったとしても、特殊な映画で面白いです。こんなに変な映画は久々かも。ロウ・イエの映画だって言われたら、なにも気にしないレベルなんだろうけど、心の準備ができてなさ過ぎた。

【イマイチだった】
キックアス ジャスティス・フォーエバー
 面白おかしくコマ動かしただけのことなのに、なんか仰々しいこと言うし。「終わらせる」「終わった」って、何がどう終わったのやら。そもそも何が始まったんだったっけ。『1』で終わってなかったのはレッドミストだけで、あとはきっちり終わったんだから、再スタートするにはもっと大きなモノがあるのかと思ったんだけどな。なんとなく始まっちゃうから、何の話だがわからなくなっちゃったよ。中途半端な学園モノ? 友情モノ?
 しかし「注射器の中身」はダメだよね。そんな都合のいい話ないよね。それは悪質な「2」詐欺。
大統領の執事の涙
 大河ドラマっぽかった。歴史を俯瞰するように見えて、点でつなぐから、シンプルなはずなのにわかりにくかった。『Jエドガー』とか思い返すとね。表現にも全く見るべき物なし。そして話が進むにつれて、「永年、大統領に仕えた執事」っていう意味が、どんどん見えにくくなっていくので、ラストが意味不明。うまく全てまとめたつもりなのだろうけど。
抱きしめたい 真実の物語
 同じ色でベタッと塗りつぶした絵にしか見えなかった。表現は去勢した大映ドラマみたいだったし、なのに品良くふるまってるから、妙にムカツクし、挿入句は水ぶっかけるみたいだったし。救いはエンドロール後。現実は色合いが上品だったわー。…はっ!そういうことを気づかせるための映画か?
 錦戸亮と話していた風吹ジュンがフレームアウトして、それを追わずに、画面には錦戸亮だけがいて、フレームの外の風吹ジュンに語りかけるとか、どう考えても「真実」よりも「物語」が前面に出ていて、それがどうも鼻についた。音楽で言うと、中音域が抜けててドンシャリで平板な感じ。映画の方法としては『500日のサマー』に近いのかな。味わいは全然違うけど。ぶっちゃけ方法も内容も苦手。登場人物に魅力感じなかったなー。暴力的だし。わざとなんだろうけど。風吹ジュンは、何故あんなに暴力的?
地球防衛未亡人
 期待したんだけど、イマイチ。『地球防衛ガールズP9』のほうが面白かった。電エースのコケぶりは面白かったけど、そういう部分が少なすぎ。なんかただのつまんない映画になちゃってた。大野未来はかわいかったけど。
チェインド
 ジェニファーもうちょっとしっかりしてください。イマイチすぎ。これじゃ普通のシリアルキラーものじゃないすか。がっくし。
土竜の唄 潜入捜査官REIJI
 三池クドカン映画の失速するダラダラ感は健在で、やや退屈だったが、話としてはまあ面白かった。好きじゃないけど。しかし三池クドカン映画ってのも、可もなく不可もなしのつまらん映画になったな。いや、もともとそうか?
ヌイグルマーZ
 作り手の価値観がさっぱりわからない。典型的で短い塊をポコポコ並べただけのような気がして飽きちゃう。『電人ザボーガー』もそうだったんだが、それぞれの塊では熱く語ってるんだけど、その言葉が画面から出てるように感じられない。あの空疎なセリフはどっちの脚本家のものだろう。『デッド寿司』はあんなに面白かったのになー、と考えてみると、井口昇の単独脚本の映画が良いということ。
モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE 亜空の深淵
 ストーリーのパーツはいいんだけど、組み立て方が悪いのかな、ブツブツな印象で、最終的に主人公の少年が何者かすらわからない。残念でした。結局、キャラそれぞれの物語が生かされてないから、バラバラな印象なのかな。キャラクターを生かすっていうのは、『タイバニ ライジング』みたいなやり方が良いんだなあと思った。
 なんか全体的に、記号に頼り切ってる表現みたいに思えちゃった。「女子高生が海賊」とか「少年が海パン姿」とか。で、肝心の主人公の少年がどういう人物なんだかさっぱりわからないし。

【がっかりだった】
赤×ピンク
 イビツな物語を背負わされた登場人物たちによる歪んだ世界など、何ひとつ美しさも魅力も感じない。こんなひどい物語に入れられた登場人物たちがひたすら気の毒なだけだ。ひどかった。本当にひどかった。心の底からひどい映画だと思う。どんな切り口からもひどいとしか。最もひどかったのは音楽のセンス。楽曲もひどいが使いどころが最悪。格闘ゲーム以下で緊張感なし。エロシーンも。
 この映画の作り手さんたちって、格闘が好きなのかなあ。愛情感じなかった。どんな格闘技でもリングっていうのは聖域だと思うが、そこに簡単に部外者が扉を開けて入れたり、挙げ句の果てには内部からぶちこわしておいて、「檻は自分から破るモノだ」とか言って、でも結局そこに戻る着地点って、それ、どうなの?どういう敬意?
僕は友達が少ない
 アニメをいったん現実に引き戻して、それをまたアニメ側に戻そうとしたってね。カップヌードルを鍋で煮込むようなことか。当然のように、つまらない映画でした。学園エロラブコメでがんがん行けばよかったのに。「肉」は「肉」じゃないし、北乃きいは老けた魔法使いみたいだし、シスターコスプレの幼女は現実的にはしゃいでたし。
posted by TcinemaholicT at 22:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月01日

2014-1月 映画の記録

*2014.1.1〜1.31

【今月の洋画ベスト】
なんちゃって家族
(雰囲気が良い!まるで吉本新喜劇のような、クラシカルな喜劇構造の映画だが、そういう安定感のある土台ゆえに、センスの良い下ネタが映える。)

【今月の邦画ベスト】
バイロケーション
(今までの日本のホラーにはない、奇妙な味加減が素晴らしいと思う。グロテスクとは違うホラーの方向性を模索している姿勢に敬服。)


【すごく面白かった!】(五十音順・以下同様)
アイドル・イズ・デッド
アイム・ソー・エキサイテッド!
オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主
7BOX セブン・ボックス
ドラッグ・ウォー 毒戦
パリ、ただよう花
ビフォア・ミッドナイト


【面白かった】
インシディアス 第2章
Wake Up , Girls! 七人のアイドル
危険な関係
ジャッジ!
大脱出


【イマイチだった】
アメリカンハッスル
エンダーのゲーム
黒執事
ソウルガールズ
MUD -マッド-
マンボーグ


【がっかりだった】
アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争
(ほんとうならベストだったんだけどなー。大好きで大好きで大好きで、5回見に行ったんだけど、最終日のコール&レスポンス回が最悪で、なんか映画と自分との距離ができてしまいました。夢から覚めちゃった。とても残念。ほんとうに残念。泣きたいくらい残念。)

Seventh Code
(「歌う天気予報」ロングバージョン。映画的な記号を斟酌して喜ぶ気にもなれず。)

Fly Me To Minami 恋するミナミ
(途中退場。あまりにも空疎すぎ。)
posted by TcinemaholicT at 00:14| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月31日

【これが最終版】2013映画総合ベスト10

 この総合ベストは、一般公開の洋画と邦画、映画祭・特集上映の映画、インディーズとDVDスルーの映画、未公開映画のすべてをあわせたものです。2013.12.14公開の映画までとしました。それ以降は来年にまわします。なので、『ハンガー・ゲーム2』『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』は来年のベストに入れます。必ず入ると思います! …しゃらっと『名探偵ゴッド・アイ』を入れちゃいました。来年にまわす気でいたんだけど、けっこう早めの公開だったので、入れなきゃまずいかなと。
 2013もいろいろとお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

1 ブランカニエベス
2 名探偵ゴッド・アイ
3 カノジョは嘘を愛しすぎてる
4 ニューヨーク、恋人たちの2日間
5 イノセント・ガーデン
6 パラダイス:愛
7 パラダイス:希望
8 パラダイス:神
9 オデット
10 マジック・マイク

posted by TcinemaholicT at 17:39| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013 DVDスルー・未公開映画ベスト(改訂版)

1 サブマリン
2 午前3時の無法地帯
3 Sound of my voice (日本未公開)
4 The To Do List(邦題:私にもできるイケてる女の10(以上)のこと)
5 彼女はパートタイムトラベラー

posted by TcinemaholicT at 16:42| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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